先代犬の黒ちゃんが天国へいったあと、
「黒ちゃんじゃない犬は飼いたくない。」
と、宣言したナッキ。
無理もありません。
もともと黒ちゃんは、ナッキの弟として、飼った犬です。
その頃、お兄ちゃんののりちゃんは一年生、ナッキは年長さんでした。
引っ越しをしてクラスにたった一人 知り合いもなく入学したのりちゃん。
反抗期も重なってよくナッキをいじめました。
その打開策として、黒ちゃんを迎えたのです。
ナッキは黒ちゃんをとっても可愛がり、黒ちゃんもまたナッキが大好きでした。
小学校、中学校と、それぞれその時に応じた濃さで一緒に過ごしました。
ナッキが高校生になって、毎日朝練に行くため、五時半に起きるようになりました。
私は、朝ごはんとお弁当のため、五時に起きるのですが、キッチンに降りていっても、黒ちゃんは横になったまま、
「あっ、お母さん起きましたか。」
目だけであいさつをします。
ところが、ナッキが起きて来ると、ちゃんとお座りをして、尻尾をふさふさ揺らして、
「おはようございます❗ナッキちゃんのこと 寝ないでずっと待っていました❗」
と言う顔をするのです。
そのあざとさが、なんともかわいく、
「黒ちゃん、さっきまで寝とったやん。」
と言うと、
「そんなこと、ありません。ちゃんと起きて待っていました。」
と言う顔で必死にナッキにアピールするのがかわいくて 毎朝のようにナッキに 今起きたことを言い付けていました。
ナッキは、毎朝、黒ちゃんに見られながら、朝食を食べ、黒ちゃんに見送られて、登校しました。
帰りも遅く、八時過ぎることもざらでした。
でも、黒ちゃんと一緒にご飯を食べ、少し遊んでから、お風呂に入って寝るだけが精一杯でした。
ナッキが黒ちゃん以外の犬は欲しくないと言う気持ちは当然でした。