高校三年の夏休み、部活を辞めさせられ、家で引きこもる次男のナッキ。
悪い友達と付き合ったりするのではないかと、気が気ではない私です。
毎日腫れ物を触るような、緊張感のなかにいました。
そんなナッキを見守ってくれたのは、
「黒ちゃんです!」
って、書くから、あの方を思い浮かべてしまうのね。
やり直し。
愛犬の《黒ちゃん》です。
黒ちゃんは 十三才の雑種のオス犬で、ナッキが幼稚園の時にお友達の家で産まれたのをもらって来ました。
その時、フィラリアの末期で余命はわずかと言われていました。
毎日毎日、魂が抜けたようにテレビの前で、ゴロゴロしているナッキ。
そのとなりにはいつも黒ちゃんがいました。
私が仕事から帰ると、いつも二人で抱き合ってお昼寝していました。
ナッキのぽっかり空いた胸の穴を黒ちゃんはしっかりと埋めてくれました。
ひとなつナッキと黒ちゃんは、寄り添って暮らしました。
そして、明日から、学校が始まるという、八月二十九日 黒ちゃんはナッキの腕の中で天国に行きました。
黒ちゃんは、ナッキの弟として迎えた犬でした。
ナッキに抱かれてうちに来て、ナッキに抱かれて旅立ったのです。
ひとなつ、ナッキを守ってくれてありがとう。
ナッキが不良にならなかったのは黒ちゃんのおかげだよ。