コギオヤ diary

折り返しの人生模索中

最後の時間

私の父はお酒の好きな人でした。

あまり酒癖は良くなくて、

子供の頃よく絡まれて

イヤな思いをしました。

どのくらいイヤだったかというと、

私は姉と弟との3人姉弟ですが、

3人とも飲酒をしません。

そのくらいイヤな思いをしたのです。


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特に弟は父の飲酒を毛嫌いし、

父が酔っぱらって頭をぶつけて

大ケガをして以来

お酒を取り上げてしまいました。

10年ほど前の事でした。

 

「盆と正月くらいは

 飲ませてあげても良いんじゃない?」

と、姉と陰で言うことはあっても、

実際同居して面倒を見ているのは

弟夫婦なので、

弟の決定に従っていました。

 

さて今回、朝の5時半頃

病院から危篤の連絡が入りました。

が、持ち直し、

7時半頃、夜勤明けの弟は帰りました。

私は10時からシフトだったので

9時まで付き添うことにしました。

呼吸は苦しそうでしたが、

呼び掛ければ反応もあり、

今日明日ということは無さそうでした。

 

ひとりで父の顔を見ていたら、

医師や看護師も、

弟夫婦もいないことですし、

どうせ先が長くないなら、

最後に父の好きなお酒を飲ませてあげよう

と、思い付きました。

夕方仕事が終わってから

ゆっくりお見舞いに来て、

飲ませてあげようと、

帰り際、コンビニでお酒を買いました。

 

そしたら急に、

そんな悠長な事を言っていたら

後悔するかも?

と、胸をよぎったので、

病院に戻り、脱脂綿にお酒を浸して、

口に入れてあげました。

父はチューチューと脱脂綿を吸いました。

嬉しい気持ちと

病気に障るかもという心配な気持ちと

遅刻しそうなあせる気持ちで、

二口ほどあげただけで、

「お父さん、夕方仕事が終わったら又来るからね。そしたら又、飲ませてあげるからね。夕方まで待っててね。」

と、言うと、父はしっかりと頷いたのです。

父は待っていてくれる。

私は安心して仕事に行きました。

 

生きている父を見たのは

このときが最後になりました。

最後だと知っていたら、

浴びるほど飲ませてあげたのに。

 

残念ですが、

一口でも飲ませてあげられて

満足しています。

 

今頃きっと、

母に叱られながら

お酒をたくさん飲んでいることでしょう。