用水路に落ちた子犬を助けた私は、次の朝、早く目が覚めました。
昔話では、動物を助けると、恩返しがデフォですから。玄関を開けて、何もないことを確認して ちょっぴりガッカリしました。
お話のようにはいかないよね。と、思いつつも やっぱり期待していたのです。
山海の珍味か? きれいな葉っぱや、小石か?いやいや、まさか、この子をよろしくお願いします。だったらどうしよう?
まぁ、そんな思いは杞憂でしたけどね。
でも昨日は 名前も住所も聞かれなかったし、きっと今、私を探しているに違いない。
私は何日か早起きを続けました。
玄関を掃除する時は気を付けてくれるよう母に頼んだりしました。母にはゴミでも、母犬と私にとっては宝物ですからね。
結局、母犬がお礼に来ることはありませんでしたが、40年たった今も暖かい気持ちで懐かしむ、その思い出こそが宝物だったのかもしれません。