コギオヤ diary

折り返しの人生模索中

居たたまれない物

「これ、傷があるから売れないの。
 欲しかったらどうぞ。」

私が週一でパートに行っている
呉服屋さんの奥さんが
出してくれたのは、
ベージュの着物地。
誰も欲しいと言う人はなく、
仕立て部屋の隅に
置き去りになりました。

「欲しい、欲しい。」
と、その場で
はしゃぐように言えば
良かったのですが、
私は一番新米ですので、
遠慮で言えませんでした。

結局その生地は一ヶ月以上
そこに置きざりにされました。
私はそういうのが苦手です。
「あげるよ。」
という好意を
無視していることになるからです。
仕事に行く度に
奥さんの好意を
踏みにじっている証拠を
突き付けられているような気持ちになり
とても居こごちが悪いのです。

なので、先日言いました。
「奥さん、これ……」
「欲しかったらどうぞ。
売り物にはならないんだから。」


はぁ。
やっとこの気まずい物体が、
視線のなかから
消えました。



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頂いた生地で作った
コンビニエコバッグ