コギオヤ diary

折り返しの人生模索中

母犬のお願い その1

中学生のころ、私の家の回りはほとんど田んぼでした。

徒歩で学校からの帰り道、私は1匹の野良犬に出会いました。
痩せて、汚れた、白い犬でした。

田んぼの中の道なので、逃げ場はありません。ここは、回り道するしかありません。噛まれたりしたら、嫌ですからね。

けれども、その犬は、様子がおかしいのです。
身体を低くして、耳を倒し、しっぽを振りながら、文字通り這いつくばって近づいて来ます。

その姿は卑屈でした。私はその時、卑屈という言葉の意味を目の当たりにしたのです。
文学少女であった私はパールバックの『大地』など読んでいましたので、卑屈の意味は知っていました。けれども初めて感じた
現実の卑屈に衝撃を受けました。

普通の野良犬とは明らかに違います。野良犬は、人間が怖いので吠えて追い払おうとするのです。ですから、近寄らない方がいいのです。

でもこの犬は、私に何かを伝えようとしている。私はそう感じたのです。